石内都: yokohama互楽荘 [SIGNED]
日本人女性写真家、石内都の作品集。かつて横浜にあった集合住宅地・互楽荘。1932年に東京の商人が娘のために建てたが、太平洋戦争後、アメリカ軍兵士のための 赤線第一号の建物となった。初期の代表作『APARTMENT』(1978年)と対をなす、もうひとつの「アパートメント」と言えるこの作品集を見ることで、建物が持つひとつの歴史が浮かび上がってくる。
『横浜市内にかつて三つの鉄筋コンクリート集合住宅があった。平沼町の平沼アパート、山下町の山下町アパートと互楽荘である。 初期三部作のひとつ「APARTMENT」(1978年)は平沼アパートの撮影から始まっている。その後取り壊されることを知り改めて撮りはじめたのが1986年ごろからである。同時に山下町アパートも取り壊しがきまり、その流れで互楽荘を知る。 平沼と山下町は同潤会アパートだったが互楽荘は個人が建てた住宅で建物のおもむきが違い建主の個性が表われた建築だった。 アパートを撮りはじめた頃、いわゆる集合住宅とは少し違う空間の空気やたたずまいの部屋に会うことが多くなり、調べてみるとその建物の前身が遊郭か赤線であることがわかったが、互楽荘の場合純粋な集合住宅が赤線に使用されるというあまり例のない歴史をもつ。 互楽荘は現在の県民ホールの真裏に位置し、その建物の大きさからかなり目立っていたにちがいなく、オープンの日にアメリカ軍兵士が殺到し混乱をきわめ射殺事件がおきて、一週間で閉鎖されたという。 その事実を知ったことで同潤会アパートとはどこか違う影の濃さをはじめに感じたことが納得できた。 何かが引っかかる。足を止めずにいられない気持ちが揺れる空間、多種多様な人間の臭いが染み込んだ建物を前にして、もののみごとに全て無くなるわずかな時間を写真に収める。そして戦後の傷を負った女達と共有した時代の一瞬の影を内包した互楽荘のビンテージプリントが出て来たことで、横浜美術館での展示と共に30年前の姿がここに甦る。』(石内都 「互楽荘の影」より抜粋) 550部限定。作者のサイン入り。
CONDITION : 新品
hardcover
64 pages
270 x 230 mm
black and white
2017
limited edition of 550 copies
signed by Miyako Ishiuchi